「独身?ならたくさんいるから紹介するわよ。」について。
■先日近所の洋品店(ブティック)の店主さんにいつもどおり挨拶したらそんな言葉をかけられた。
ふふん。
それはねー,ムリ。
と,内心思いつつ,出がけの立ち話。
■お一人で商売されている女性はコミュニケーション能力を発揮されている方が多いので,そう,他にも例えば,保険屋さん,宝石屋さん,化粧品屋さん…,そういうハナシを媒介される方も少なくない。
でもねー,それは,イマドキ,ムリ。
つまり,あれでしょ,常連のお客様の娘さんのハナシでしょ。
「居心地が良すぎてもねー,いつまでいるのかしら」とか,
「いい人がいれば良いんだけれどねー」とか,
「うちの娘は奥手でねー,そんなことばかりしていて」とか,
それはね,いいわけというか,娘を自慢するコトバの流れであって,本気でそうは思ってないんだなー。
気だての良い娘に家事を手伝ってもらったり,買物や観劇や食事につきあってもらったり,時には一番親しい友人のように話し相手になってもらったり,おしゃれを楽しんだり,そういう幸せな日々を送ってますよ,という。
■これが母親でなく父親であっても同じようなもの。
イマドキ,本気で娘を嫁にやろう,なんて考えている親はいない。
もう完全に生活の中に組み込まれて,家事もなにもかも分業されているんだから,いまさら抜けられても困るしね。そういう事態を想像すらしていない。
想像するとしたら,自分たちの老後も娘がそばで優しくしてくれるだろうってこと。
■娘はといえば,そりゃ,恋愛もしたいし,実際はしてるでしょう。ほとんどの場合。
親御さんに会わせてることもあるでしょう。まずはそれとなく。
ご両親もよほどでなければ,そこで諍いは起きない。
「ボーイフレンドだねー。うちの娘にだってそのくらいはいなきゃね。」とかで受け入れてる。
ときには,その男性の条件によっては,それもまた娘の自慢話に含めてあちこちにハナシをしてる。
でも,それとこれは別。
「そろそろいい歳だし,結婚もしたいなー,これが最後のチャンスかなー。」って,娘が思い始めていても,結局はまた元に戻る。
そんな良い娘なら,親の気持ちを汲むのが当然だから。
いままで,そうやってずっと子供の頃から,生まれたときから大切に育てられてきたんだしね。
■親が悲しむようなことが,なんでできるんだろう。
親が反対しそうなこと,親の信じ切っている幸せを踏みにじるようなことを,どう,切り出し,どう,実行できるんだろう。
今までずっと「親の幸せは自分の幸せ,自分の幸せは親の幸せ」ってやってきたわけでしょ。それを今更,どうできるってもんじゃない。
それに,自分自身も,この環境を抜け出して,どうなってしまうのか,想像もできない。
いままで母親の補助でしていた家事も,自分で全部しなければならないかも。
その上,共働き?
■そうだね,親の世代まではだいたい好景気時代を経てここまで来てて,年功序列の賃金をもらえてて,勤め上げていれば退職金ももらえるし,その後の年金もまだもらえる。
母親は,若い頃は仕事をしていたとしても,もう今頃なら専業主婦で,娘が家事を手伝うとしてもそれほど負荷を負わせないし,どちらかというと,旅行に行ったり,おいしいモノを食べたり,習い事をしたり,または教えたり,そんな暮らしをしている。
そこへ娘も興味がある部分に相乗りして楽しんでられる。
■対して,結婚相手の世代の男性は,それらすべてが保証されていなくて,いまだって,どんな一流企業に勤めていても,明日はどうなるかわからんし,それなりの企業なら転勤や配置転換もいろいろある。
サービス残業の日々の深夜帰宅で疲れ切っててセックスレスだったりもする。
一流じゃなくても企業勤め,つまり正社員自体が少ない,派遣だったりアルバイトだったり。自活してる人はみな,苦労してる。
自活していないとこれまた,男性側のその後の生活もなかなか想像できない。
いままで自由にしていたお金はぜんぶ貯金にまわさなきゃならないから,楽しいことがずいぶんできなくなる。
つまり,男性が同居状態だと,男性も家を出にくい。
どっちの近所に住むか。
どちらの親も子供を遠くへ手放したくなかったりする。
■もしも,それでも,娘が強引だったら,そりゃ,説得するよね。
「わざわざそんな苦労を買いに出て行くのかい?」ってさ。
「それでも」って聞き分けのないやんちゃ娘だったら,親御さんは策を講じるよね。
なんたって,生まれたときから今までの何十年,生活を共にしていて,娘がいやがることも,怖がることも,ぜーんぶ,知り尽くしているわけだから,正面対決しなくても,あきらめさせるにはいろんな方法がある。
いま頑張ってる仕事のこと,熱中している趣味のこと,暮らしている場所のなじんだ環境のこと。そもそも見合う相手なのかとか。
■確かにね,誰も得をしないんだよ。イマドキの結婚て。
というか,それ以前に親元を出て自活することも,合理的なことじゃない。
結婚したとして,子供をつくることもまた,合理的じゃない。
どれもこれも,ライフステージをのぼっていく事柄では,お金がかかって苦しくなっていくばかり。
ご両親が裕福なら,ご両親の望む相手との結婚はできるってことだね。
ご両親が子の家庭まですべて自分事として組み立てていく。
孫を作らせて孫の教育も含めてご両親の楽しみの中。
そういう例も多いよね。
でなければね,たいへんだ。
それを楽しいって思えるまでには,けっこう隔たりがあるよ。
それぞれがそれぞれの環境のまま,恋愛は楽しめるしね。
■ゴールがなければまた別れて次ってことになる繰り返しにはなるんだけれど,それがなぜかわかってる人はあまりないと思う。
男(女)運がないとか,そもそも縁が少ないとか,出会い方がわるいとか,他に理由はいくらでも思いつくからね。
それらを超えていくまでの動機が育めないから,時間切れして別れていくだけのことなんだけれど。
そう,恋愛は,それぞれの環境を維持したままに行われるから,どちらかか両方の多少の環境の変化で,いままで会えたものが会えなくなったり,しちゃうからね。
それぞれの環境を一緒にする,それぞれの現在の環境から抜け出して新しい2人の環境を作らない限りは,別れなくちゃならなくなるのは時間の問題なんだから。
■仕事を手伝ってもらっているもっと上の年齢のおばさま方,自分の親よりももっと年上の世代の方々は,もう,そういう「縁結び」のハナシは自分から進行はしない。
「嫁もらわないとねー。」とか,「奥さんもらって手伝ってもらいなさいー。」とかは言うけれど,あくまでも他人事だ。
自分の子供たちも,それなりにもう独立して生活してるし,そういうのを経て,どういうことだか,ちゃんと現状を把握してるんだと思う。
間に入っても,紹介者の顔をつぶさないように気を遣わせてしまうだけだからね。
うまくいかなければ,そう,どっちがどっちを気に入らなかったとか,そういうハナシになって,それぞれの家庭事情も知られることにもなるし,紹介者や親御さんの友人関係もいままでどおりでいかなくなることだってあるだろうし。
■つまりは,そう,それは,イマドキ,ムリ。
縁を取り持ってありがたがられる時代ではなくなってしまってるんだなー。
それは,チャレンジとして,あってもいいとは思う。
自分も30歳を超えるあたりから,結婚ってものを現実として捉え始めて,それまでソデにもしなかった紹介とか,出会いの場とか出てみたし,それはそれで恋愛まではいくけれど,そこから先は結局はソコだ。
そこを超えてこられちゃうほどの向こう見ずな娘さんはそうそういないし,自分みたいにひとつひとつ,正直に,誠実に,なんてやってたら,相手のご両親にも手の内が見えちゃうし,相手にも現実のキビシサがバレバレで怖がらせちゃってムリ。
■賭事やってたり働かなかったり酒飲んで暴力ふるったり,そんなオトコだってうまくごまかして進められた人の方が結婚しちゃってたりする。とっくに子供までいたりする。
というか,そういう彼らは,自活するのが危うい,つまり,それが活路だから,もっと早い時点でいろんな策を身につけているんだな,きっと。
極端には既婚なのにさらに他の女性と結婚を前提としたマジメな恋愛が成立してたりする。ツワモノ。
いや,ちゃんとした人がちゃんと結婚もしてるよ。
たくさんいる。
成功した理由は,上記の困難をどう乗り切ったかって観点で聞いてみるとよくわかる。
上記の論を裏付けるものであっても反するものではないはず。
■ただね,いまでもそういうハナシを持ちかけてもらえるってことは,少なくとも第一印象ではその女性(店主さん)のお眼鏡にはかなったってことだから,ありがたいことだし,少しは自信にしてもいいのかなって思うよ。
結婚しない人生もあるし,それを決めてる同輩も多い時代とはいえ,もう少しチャレンジしてみてもいいかなって,自分では思ってる。
恋愛はしていたいけれど,失恋はキツイしね。
失恋がつらくない恋愛もどーかと思うし。笑
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